Text & Photo by : 八幡浩司(24x7 RECORDS)

 現在にジャマイカだけではなく、アメリカ、ヨーロッパ他でも人気と注目を集めているYAADCORE(ヤードコア)が2月下旬~3月初旬に日本ツアーを実施した。「アーティスト」としては初来日ツアー、その帰国前日に話を聞くことができた。


●キャリアを確認させてください。

YAADCORE(以下Y)「出身はジャマイカのマンデヴィル。子供の頃から音楽が身近だったのは父親がサウンド・システムを運営していたから。その父親の影響でレゲエやダンスホールを聴いていて、自然とDJをやるようになった。そう、DeeJayではなくセレクターの方のDJで、曲をMIXする練習を始めるようになった。DIWALI(リディム=2002年・STEPHEN “LENKY” MARSDEN制作のビッグ・リディム)の曲をMIXしたりして練習した。それでDJとして地元で活動をするようになった」。


●始めた時はダンスホールもプレーしていたんですね。

「最初はね。その後にキングストンに移ることにしたのはもっと活動する場を求めたからだったんだけど、そこでラスタに傾倒して、よりルーツな曲をプレーするようになったんだ。ダンスホールと言うよりも、もっとポジティヴな曲をプレーしたくなってね、暴力や銃、セックスとか、そうしたネガティヴな曲よりもね」。


●ラスタになるきっかけはなんだったんですか?

「マリファナ」。


●最初はマリファナ?

「父親がマリファナに対して否定的だったこともあってキングストンに移ってからなんだけど、自分はマリファナを通じてラスタに興味を抱くようになって、その意味を知ったり、学ぶようになったんだ。それでよりルーツな曲、ボジティヴなメッセージを持った曲だけをプレーしていくようになって、KINGSTON DUB CLUBでプレーさせてもらう機会を得るようになった」。


●KINGSTON DUB CLUBはキングストンのスカイライン、山の中の会場ですよね?

「ROCKERS SOUND STATIONがオーガナイズする会場で、週末にルーツ・イヴェントが開催されている場所だね。そこでプレーするようになって、自分のイヴェント『DUBWISE JAMAICA』も始めることにして、それで自分の存在が知られるようになった。『DUBWISE JAMAICA』もKINGSTON DUB CLUBだけではなく、海外でも開催するようになったり、呼ばれるようになったりしてね」。


●自分も最初はその「DUBWISE JAMAICA」の人、あと、PROTOJEの専属DJとして知りました。

「PROTOJEとは共通の知り合いを通じて出会った。それで意気投合して一緒に活動するようになってPROTOJEのDJとしても世界をツアーするようになった。前回(2018年)に初めて日本に来たのもPROTOJEのツアーの時で、その時もDJとして来日していたから、今回も自分がDJをすると思っていた人はいたみたいで、会場でも『DJはしないのか?』って聞かれたりもした」。


●今もDJはしているんですか?

「いや、今はアーティストとしての活動に専念している」。


●DJからアーティストに転身したのはどうしてですか?

「もともとアーティストになろうと思ってたわけではないんだ。アーティストを目指したこともなかった。最初に人前で歌うことになったのも偶然で、それはイタリアでDJとしてプレーしていた時に、曲に合わせてMCをしていたら、客から『歌って、歌って』と言われたからだったんだ、その時のヴァイブでね。でも、自分が歌うつもりはなくても自分の中で曲が出来ていたりもしたんだ、『Ready Now』とかもそうだったけど、曲が自分の中で自然と浮かんでいたりしたんだ。そうだね、DJとして曲をプレーするからプレーしたくなる曲がイメージできたりしていたかもしれない。あと、MCをしていたことも歌うことには役立っていると思うし、PROTOJEのショーを通じて学んだりしていることもあると思う。それで自分でも歌うことにして『Ready Now』をリリースしたのが2019年。そこからは自然とアーティストとしての活動に移行していくようになった。2020年に『The Calling』という曲をリリースしているけど、まさにそれは『Calling』で、呼ばれるように自然と導かれてアーティストになったんだ、とっても自然なこと、ナチュラルな流れだったんだ」。





●楽曲の制作は自身でされているんですか?

「自分で全て制作する場合もあれば、他のプロデューサーから依頼されたり、リディムを渡されて一緒に制作する時もある、その時々だね。例えばJAH9との『Police In Helicopter』(2023年リリースのJOHN HOLTのカヴァー)はアメリカのSUBATOMIC SOUND SYSTEMがプロデューサーで、自分は最初はコーラスを入れることを依頼されたんだけど、自分では自分の声がその曲のコーラスに向いているようには思えなくて、それで届いたリディムに合わせて歌ってみることにしたんだ。それを聴いたJAH9も気に入ってくれて彼女とのコラボレーション曲になったんだ」。



●今に話された中で出てきた「Ready Now」「The Calling」「Police In Helicopter」、あと、人気曲「Ghetto Youths」やLEE PERRYとの「Play God」も収められたアルバム『REGGAELAND』が2022年にリリースされています。


「今回に日本のツアーは『REGGAELAND』を直接伝え届けることが目的だったんだ。『REGGAELAND』は自分のアーティストとしてのデビュー・アルバムで、さっきも言ったけど、今はそれを世界に届けることに専念している。制作は自分の〈12 YAAD RECORDS〉で、リリースは〈DELICIOUS VINYL ISLAND〉からリリースしている」。


●〈DELICIOUS VINYL ISLAND〉は名門インディー・レーベル〈DELICIOUS VINYL〉内のレゲエ・レーベルですけど、契約に至った経緯を教えてもらえますか?

「そう、〈DELICIOUS VINYL〉はロサンゼルスのレーベルだけど、彼らとの出会いも自然な流れとかしか言えないかな。そう一緒にやるために出会った感じかだね。『REGGAELAND』は配信だけでなくLPもCDもリリースしている」。


●『REGGAELAND』、また自身の楽曲を通じて伝えたいことはなんですか?

「ボジティヴなメッセージと音楽だね」。


●それはラスタとしての思考が基に存在していますよね?

Y「勿論」。


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●改めて「ラスタ」を説明してください。

「ラスタ、ラスタファリズムというのはジャマイカから生まれたカルチャー。ただ、ラスタはジャマイカ人のためだけのものではないんだ。国籍とかは関係無いし、黒人だけのものでも無いし、肌の色の違いも関係無いんだ。自分にも中国の血が流れているしね。リンゴとオレンジの違いはあっても同じ果物であるように、国籍や肌の色とか性別の違いはあっても同じ人間であるようにラスタは全ての人達のためのものなんだ。それぞれの様々な違いを超えてお互いに結びついて、共にボジティヴに生きるための思考なんだ。そのラスタとしてのポジティヴなメッセージを世界に届けていくことが自分のアーティストとしての目的でもあるし、曲をリリースしたりライヴ活動をしていく理由なんだ。中にはお金のために歌う人もいる、そうすることで家族や仲間達を支える必要がある人もいる、それを否定はしない、ただ、自分はそうではなく、それとは違った目的と理由があるんだ」。


●アーティストとしての活動はまだ始まったばかりとも言えるかと思いますけど、今後のビジョンはありますか。

「近い将来で言えば、『REGGAELAND』のDELUXE EDITIONをリリースできたらな、と思っている。そう、違うヴァージョンとかDUBとかも収録した改訂版をリリースできたら、と思っている。あと、活動をしていく上で参考にしているのはMIKEY DREAD。MIKEY DREADは彼はDJでもあったし、アーティストでもあったし、プロデューサーでもあったし、DUBも制作していたけど、自分もMIKEY DREADみたいに活動していけたらと思うね」。


●アーティストとしての初の日本ツアーを終えたばかりですけど、特別な印象や感想があれば教えてください。

「まずは自分を迎えてくれたことに感謝している。今回は各地を回り、直接多くの人達に自分の音楽を届けられたことに感謝しているし、それを実現させてくれた人達にも感謝している。ショーもだけど、初めてスノー・ボードを経験したのも印象に残っているね(笑)。とにかく日本は素晴らしい国だと思う。他の国との一番の違いは言葉の壁だけど、その言葉が通じ合わない分だけ熱心に自分の音楽を聴いてくれる印象がある。そうやって自分の音楽をちゃんと聴いてもらえたことにも感謝しているけど、今回はまだ始まりであって、これからも自分の活動は続くし、また日本には必ず戻って来たいと思っている。リリース、ショーと一つ一つ種を蒔いていくように活動を続けて、それに水を与えて育て続けていくようにして、やがて大きな果実となるようにして自分を育てていきたい。その水を与えて育てていくのも自分の役割で、自分で自分を成長させていけるようにしたい。引き続き応援して欲しいし、また日本に戻ってくる時を楽しみにしておいて欲しい」。

協力 : All Di Best Co. Ltd.


YAADCORE
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YAADCORE
REGGAELAND
Delicious Vinyl Island / 12 Yard Records - 2022年

01. Bee With Me
02. Ready Now (Remix) Feat. PRESSURE BUSSPIPE & I WAYNE
03. Reggaeland
04. Police In Helicopter (Vocal Mix) Feat. JAH9 & SUBATOMIC SOUND SYSTEM
05. Money On Trees
06. Ghetto Youths
07. Nyquill - Spliff a Light Spliff (REMIX) Feat. RICHIE SPICE
08. Shrooms
09. La La Laa Feat. SARAH COUCH
10. Say That You Love Me
11. Play God Feat. LEE PERRY
12. The Calling
13. Ball Game - Knock It
14. Tina